オフィスづくりのプロが考える、コロナ禍以降の場づくり。

2020年、新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わったことから、ウチダシステムズもオフィスのあり方を変える必要に迫られていました。そこで、自分たちの働き方を見直し、2020年の9月には自社オフィスのリニューアルを実施しました。今回は、コロナ禍以降のオフィスのあり方がどのように変わったのか、ウチダシステムズのオフィスデザイナーと一緒に考えていきたいと思います。

「どんな考え方でオフィスデザインを行っているのか?」「新型コロナウイルスの影響で働き方は変わったのか?」など、自社オフィスのリニューアルプロジェクトの事例も交えながらご紹介していきます。

デザイナープロフィール

尾花 隆(プロジェクトデザイン室 次長)一級建築士

■手掛けたPJ
株式会社大林組、株式会社J-オイルミルズ、パシフィックコンサルタンツ株式会社など

■デザインするときにこだわっていること
美しさと納得感

「場づくり」の会社がコロナ期に考えたこと。

ー新型コロナウイルスの影響下でどのような対応をしたのでしょうか?

当社でも、最初は他の会社さんがやっていたようにアクリル板を立てたり、席を間引いたりなどの対策を行っていました。しかし、働き方自体がガラっと変わってしまったため、従来の働き方で設計されたオフィスがあまり機能していないと感じるようになったんです。これを機に、まずは自分たちの働き方を見つめ直し、再定義をして、それに合わせてオフィスもリニューアルしようということになりました。

ーコロナ禍で、オフィスづくりの考え方はどのように変わったのでしょうか?

ウチダシステムズの本社オフィスではまず、コロナ禍以降の働き方のベースとして「積極的分散」というものを掲げました。「積極的分散」というのは、個々がテンポ良く集まってまた離れ、高い機動性を持ちながら自律的に働くという意味です。コロナ禍以降、そういった働き方が我々の働き方だよね、と再定義しました。リモートでも働くことはできますが、リアルで接することによって温度感や顔色がわかりやすくなりますよね。そういった観点から、当社にはリアルを重視したいという想いがあり、その「積極的分散」という働き方を支える場としてのオフィスが必要だと考えました。簡単に言うと、「来たいと思ったら来られる場所をちゃんとつくろう」ということです。

そのほかに、コンセプトとして「やさしいデジタル」というものを掲げています。例えば、会議室に高度な機器が導入されていたとしても、使い方が難しかったら本末転倒だと思うんです。「このコードを繋いでこれも繋いで」という複雑なものではなく、どんな社員でも使いこなせるように「このコードを刺したら繋がる」「このボタンを押したら起動する」という簡便さがとても大事だと思っています。

同じような課題を抱えている会社もたくさんあるので、ウチダシステムズが考える「コロナ禍での働き方に対応できるオフィスづくり」を、そのままお客様へ提供できるようにしたいと考えています。

コロナ禍のオフィスリニューアルとこれから。

ー2020年の自社のオフィスリニューアルは、どのように進めていったのでしょうか。

リニューアルまで時間がなかったこともあり、少数精鋭のプロジェクトメンバーで集まって「どういう働き方を目指すのか、オフィスはどういう形がふさわしいのか」という根本の部分をまずは議論しました。その後、プロジェクトメンバーで決めたことを経営層に提案をしていくという流れでリニューアルを進めました。

ー具体的には、どのようなリニューアルを行ったんですか?

コロナ禍以前にはなかった設備を増やして、会議室にもWEB会議のソリューションを装備しました。正確に言うと元々そういった設備はあったんですが、使いこなせていなかったんです。リニューアルを機に「やさしいデジタル」というコンセプトのもとで、誰もが使いやすい形にしました。

そのほかにも、自社オフィスなので、なかなかお客様に納得していただきづらい実験的なことも行っています。例えば、オフィスの中心に今までなかった大きなコミュニケーションスペースをつくりました。「本当に使われるのか?」と不安に思ったり、「リアルで集まる人は増えないよね」という意見があったりする中で、あえてみんなで集まれる場所を中心に配置してみました。「使い勝手はいいだろうか」「稼働テーブルを動かして運用するとよいだろうか」と考えながら、新しいオフィスづくりの一環としてトライしています。

ウチダシステムズ東京本社のサテライトオフィス的役割を持つ「HANARE」。大きな窓からいつでも美しい隅田川の風景が眺められる落ち着いた空間です。

ーABW*(仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方)の一環として「HANARE(はなれ)」をつくりましたが、どのような狙いがあったのでしょうか?

*ABW=Activity Based Working

「HANARE」をつくった背景としてはソーシャルディスタンスをしっかり取りましょうということがありました。みんなが出社したいときに来られるようにするには、 全員が座れる席を用意しなければいけません。本社だけでは全員分の席数を確保できなかったため、近隣の雑居ビルを借りて「HANARE」としてリニューアルしました。

「HANARE」の位置付けは、オフィスでもなく自宅でもないカフェのような場です。 セキュリティが担保されていて、サーバーにもアクセスできる環境をつくり、サテライトオフィス的に使ってもらおうという狙いがありました。しかし実態としては、思考をまとめるような仕事だったり、テキストを考えたり、という個人の集中作業で使うケースが多いようです。あとは、食事の時間だけお弁当を持って行き、「HANARE」で食べるなどの使い方もされています。

「HANARE」の課題として、使う人が限定されてしまっている、という実態があります。同じ働き方をする場合、本社の方が広くて、人もいて、目的を達成しやすいんです。なので今は、本社と「HANARE」をどう使い分けしていくかを考えています。ある機能に特化した空間にするなどの特色づけを検討中です。

オフィスデザインに大切なのは、生活の場という視点。

ー「オフィスをつくる」より「オフィスを運用する」ことに重きを置いている印象です。

ウチダシステムズの考え方としては、私が入社したときから一貫してオフィスを運用していくことに重きを置いています。

お客様にとっては、オフィスができることよりもその後の使い勝手の方が大切だと考えています。 この考えは私だけではなく社員みんなが持っているもので、ウチダシステムズのオフィスデザインの根源となっています。

ー「かっこいいデザインをつくる」というよりは、お客様の生活の場を過ごしやすくするためにフォローするというような思考ということでしょうか。

はい。もちろんデザインの手を抜くということはありませんし、お客様のご希望のデザインや、デザイナーとして自分が満足できるようなデザインを提供したいという想いはあります。しかし、「オフィスは生活の場」ですから、デザインを優先した結果、使いにくいオフィスになってしまうことはあってはならないと思います。オフィスでの生活がベースにあって、かつ視覚的にも「このデザインいいね」と思われるようなものでないといけません。

もちろん、お客様によってはデザイン重視でオフィスをつくることもあります。ですが、そういった中でも、どうやって生活しやすいオフィス空間にするか?を考えながらデザインしています。

ー例えば、お客様から「1、2年使ってみたけど、課題が出てきた」などの運用上のご相談はあるのですか?

「会議室の運用を少し考えてみたい」「この場所は使われる頻度が少ないので、何かアイデアが欲しい」などのご相談が結構ありますね。

スペースが意図通りに使われないというお悩みに関しては、その場所の設計がフィットしていないこともありますが、「どうしてこのスペースが生まれたのか」「どんな使い方を期待しているのか」という点をうまく浸透させられていないケースも多いと思っています。

そういったケースには、会社の目指す姿や理念浸透をお手伝いをする「VECTOR(ベクトル)」チームと連携しながら進めることもあります。VECTORチームでは、トップメッセージの周知やオフィスのルールブックを作るための支援などをしています。

自分たちらしさを体現できるオフィスをつくるために。

ーVECTORはどういった経緯で生まれたのでしょうか?

オフィスづくりに関しては、自分たちらしさを表現・体現することが非常に大事だと思います。それをお客様の場づくりの中でお手伝いしていきたいという想いのもと、VECTORが生まれました。企業のトップの方々にはそれぞれビジョンがあり、社員に対するメッセージを持っているんですが、残念ながらそれらがきちんと伝わっていないことがあります。トップの声をみんなに届けて、同じ方向を向いていこうというのがVECTORというサービスの始まりです。

ーVECTORはオフィスコンサルティングではなく、インナーブランディングを一緒にやるサービスだ、という印象がありますね。

おっしゃる通りで、インナーブランディングの要素が強いです。いろいろなエビデンスをもって「こうすべきです」というような形のコンサルティングであれば、おそらく他社にもたくさんあると思います。 どちらかと言うと、当社はもっとお客様と近い距離で、熱苦しく「こうしましょうよ」と決断を支援していくところが特徴かもしれません。常にお客様と一緒になって場づくりを考えています。

ウチダシステムズとしては、お客様の期待を越える存在価値の高いパートナー企業になることをビジョンとして掲げています。オフィスはつくって終わりというものではなく、さまざまな課題が出てはアップデートしていくものです。先ほども言いましたが、そういったときにお客様の一員となって、一緒に考えられるパートナーであり続けたいと思います。


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

この記事を書いた人

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そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。