
企業ではBCP(事業継続計画)の見直しが進んでいます。
BCPとは、自然災害やテロなどの緊急時に、従業員の安全を確保しながら事業を継続・早期復旧するための計画です。
そのために食料や飲料水、簡易トイレなどの備蓄を進める企業は増えていますが、生理用品をはじめとする女性用衛生用品まで備えている企業は、まだ多いとはいえません。
では、BCP対策として女性用衛生用品の備蓄を重視すべき理由はどこにあるのでしょうか。
企業の導入事例や備蓄のポイントを紹介し、誰もが安心して働き続けられる職場づくりのあり方を考えます。
この音声コンテンツは、記事の文脈をAIが読み取り独自に対話を重ねて構成したものです。文章の読み上げではなく、流れや意図を汲み取った自然な音声体験をお届けします。※AIで作成しているため、一部誤りや不自然な表現が含まれる場合があります。
BCP対策として女性用備蓄品に目を向ける必要性
最近は自治体や学校で生理用品を常備する取り組みが広がっています。*1
また、企業でも人的資本経営やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の一環として、女性用備蓄品を見直す動きが出始めています。
そうした取り組みをBCPの観点からも進めていくべきなのは、なぜでしょうか。
従業員1人ひとりへの備え
BCPは次のように定義されています。*2
災害時において中核事業を中断させないようにする、または、万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させるための手順を記したものであり、災害時に利用するものです。
ただし、BCPは、設備やシステム、建物を守るためだけの計画ではありません。
事業を継続するためには、それを担う従業員が安全に、安心して働ける環境を確保することが欠かせません。
中小企業庁のガイドラインでも、従業員の安全確保は、企業が事業を継続するうえでの重要な要素として位置付けられています。
しかし、従業員と一口にいっても、必要となる支援は1人ひとり異なります。年齢や健康状態、障害の有無、家庭環境などが違えば、備えるべきことも当然、変わってくるからです。
企業が防災対策を進める際には、性別や年齢、国籍、身体的な特性など、多様な立場の人の視点を取り入れることが欠かせません。*3
女性用衛生用品を平時から備える理由
女性には女性特有のニーズがあります。
平常時であれば、生理用品やデリケートケア用品はコンビニやドラッグストアで気軽に購入できます。
しかし、大規模な災害が発生すると状況は一変します。
道路の寸断や物流の停滞によって商品が店舗に届かなくなったり、多くの人が一斉に買い求めたりすることで、一時的に品薄になることがあります。
たとえば、2016年に発生した熊本地震では、熊本県内の緊急輸送道路約2,000kmのうち、50か所で通行止めが発生し、物流が滞るという事態が生じました。*4
また、帰宅が困難になって数日間会社で過ごす場合や、避難所生活が続く場合、必要なものを入手できるとは限りません。
2011年に起きた東日本大震災では、首都圏の交通の便がパンクし、500万人超の帰宅困難者が発生しました。*3
その背景として、都内に帰宅困難者を受け入れる施設が不足していたこと、不必要な移動を控えるべき時間帯に、企業が社員に対して早期帰宅を促したことなどが挙げられます。
そのときの教訓から、東京都は2011年以降、企業に対して災害時に向けた「自助」としての準備をするよう呼び掛けてきました。
2012年に制定した「東京都帰宅困難者対策条例」では、従業員が3日間、企業内に滞在できるだけの防災計画や水、食料などの備蓄を用意するよう求めています。
女性用備蓄品は企業への信頼にもつながる
災害時に従業員が安心して過ごせる環境を整えるには、食料や飲料水だけでなく、生理用品をはじめとする女性用衛生用品も必要な生活物資として備えることが重要です。
備えが不十分だと、衛生面や健康面だけでなく、不安やストレスの増加にもつながり、従業員が安心して業務を継続することが難しくなるおそれがあります。
その結果、企業の事業継続にも影響を及ぼしかねません。
女性用衛生用品の備蓄は、従業員を守り、事業を継続するためのBCP対策の1つとして位置づけることが重要です。
一方で、女性用衛生用品は災害時だけに必要になるものではありません。
日頃から利用しやすい環境を整えておけば、従業員の安心感や働きやすさの向上につながるだけでなく、災害時にもスムーズに活用できるというメリットがあります。
企業ではどのような備えが進んでいるのか
内閣府女性参画局が47都道府県、政令市含む1,741市区町村を対象に、2022年に行った調査によると、生理用ナプキンを常時備蓄している自治体は、82.5%に上っています。*5
一方、生理用品を備蓄している企業の割合は31.8%に留まっているというデータがあります。*6
では、女性用備蓄品の整備を進める企業では、どのような取り組みをしているのでしょうか。
導入事例をみていきましょう。
女性目線のBCP
上述のように、BCP対策には、多様な立場の人の視点を取り入れることが大切です。
ところが、自治体では防災分野を担う女性職員はまだ少ないのが現状です。*3
内閣府の調査によると、2023年4月時点で、市町村の防災・危機管理部局に勤務する女性職員の割合は約1割に留まっています。
こうした課題を踏まえ、企業でも防災対策に多様な視点を反映させようとする動きが広がっています。
その一例が、ITシステム開発などを手がけるNECソリューションイノベータです。
同社の担当者は、2011年の東日本大震災で自身が帰宅困難者となった経験から、女性の視点を取り入れる重要性を強く実感したといいます。
そして、災害対策の検討段階から女性をはじめとする多様な人材が参加することで、これまで見落とされがちだった課題に気づくことができると指摘しています。
たとえば、災害時に生理用品などがどこに保管されているかという「情報」、スカートやパンプスでも無理なく過ごせる「スペース」、生理用品などを含めた「備蓄」といった視点が必要です。
同社では、BCPの策定・見直しを担当する主管部門5人のうち2人を女性が担っています。
担当者は、災害時に必要となる設備や備蓄品を定期的に見直すことによって、多様な従業員が安心して過ごせる防災対策を進めています。
職場に滞在する女性のための必要物資と環境
NECソリューションイノベータでは、緊急時に企業に滞在する場合、必要な女性用備蓄品として、以下のようなものを挙げています。*7
- 生理用品
- ウエットティッシュ
- 靴下
- 毛布(ブランケット)、多めに
- 女性専用の部屋
災害はいつ起こるか分かりません。
そのときに居合わせた取引先や関連会社、外注先など、外部来訪者のことも想定し、自社女性社員数+αの備えがあることが望ましいでしょう。
平時の福利厚生がそのままBCP対策に
ここでは、平時の福利厚生が災害時にはそのままBCP対策ともなる例として、「生理用ナプキンIoTディスペンサー」をご紹介します。
OiTr(オイテル)とは
OiTr(オイテル)は、「One in The restroom (個室トイレにあるべき大切な一つ)」の頭文字からネーミングされました。商業施設やオフィス、学校、公共施設などの女性用個室トイレに、生理用ナプキンを常備し、無料で提供するサービスです。*8
目指しているのは、「トイレットペーパーと同じように、生理用品も必要なときに当たり前に使える社会」。
2026年7月末日現在で、393か所に、4,355台設定されています。*9
ナプキンは専用ディスペンサーから受け取る仕組みで、広告協賛企業の広告費によって運営されているため、利用者は無料で利用できます。*8

出所)オイテル株式会社「サービス」
https://www.oitr.jp/service/
OiTrの導入先は急速に拡大し、現在は393か所に4,355台、設定されています(2026年7月末日、ウェブサイト上の情報)。*9
その背景には、急な生理や生理不順などで困ったときに安心して利用できることに加え、女性の健康や働きやすさを支える福利厚生・ウェルビーイング施策として評価されていることがあります。*10
ABW型オフィスに欠かせない設備
富士通では、2022年からOiTrを導入しました。導入の背景には、同社が進める「ワークライフシフト」という働き方改革があります。
社員が働く場所を自由に選べるハイブリッドワークでは、固定席や個人ロッカーがなくなり、生理用品を常に持ち歩かなければならないことが女性社員の負担になっていました。
こうした社内の声を受け、生理用品を職場に備えることを検討したといいます。
導入にあたっては、個室トイレに生理用品を置くだけでなく、必要な人が必要なときに利用できる管理機能を備えたOiTrを採用しました。
導入後は、「ありがとう」という感謝の声が社内SNSに数多く寄せられ、海外の社員からも好意的な反応があったといいます。
また、反対意見はほとんどなく、当事者だけでなく周囲の社員も自然に受け入れたことが印象的だったと担当者は話しています。
富士通では、OiTrを単なる生理用品の提供サービスではなく、出社時の安心感を高め、職場環境や従業員エンゲージメントの向上につながる取り組みと位置付けています。
また、導入を通じて、それまで表面化していなかった社員の潜在的なニーズに気づくことができたことも大きな成果だったと振り返っています。
この事例が示すように、生理用品を平時から職場に備えることは、日常では従業員の安心感や働きやすさを支える福利厚生となり、災害時には必要な物資を確保するBCP対策としても機能します。
平時と有事の両方に役立つ備えである点が、非常に有益です。
おわりに
BCPというと、非常用電源や通信手段、食料、飲料水などの備えに目が向きがちです。
しかし、事業を継続するためには、物資を備えるだけでは十分ではありません。従業員が安心して働き続けられる環境まで視野に入れた備えが欠かせません。
女性用衛生用品は、一部の従業員のための特別な備えではありません。従業員1人ひとりを大切にするという企業の姿勢を具体的に示す備えです。
こうした視点をBCPに取り入れることが、結果として企業の事業継続力を高めることにつながります。
1人ひとりの従業員を大切にしているか―女性用衛生用品の備蓄は、そうした企業の本気度を示す、大切な指標といえるでしょう。

この記事を書いた人
資料一覧
*1
讀賣新聞オンライン「女性の健康課題巡る経済損失は3兆円超、解決目指す「フェムテック」広がる…トイレにナプキン・体調予測」(2026年7月25日 13:00)
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20260725-GYT1T00052/
*2
中小企業庁「4. 平常時におけるBCPの策定と運用(中級コース)」p.4-21, 4-62
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/download/bcppdf/bcpguide_04-2.pdf
*3
日経ビジネス「BCPにもダイバーシティー NEC系など、東日本大震災の経験生かす」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/050100184/
*4
国土交通省「今後の災害・物流ネットワークについて」p.4
https://www.mlit.go.jp/common/001214462.pdf
*5
内閣府男女共同参画局「地方公共団体における男女共同参画の視点からの防災・復興に係る取組状況について フォローアップ調査結果(概要)」p.2, 13
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/chousa/r4_zentaigauyou.pdf
*6
PRTIMES 心幸ホールディングス株式会社「【いつ起きてもおかしくない災害!総務に聞いた、会社の備蓄管理は十分できてる?】現在自社で足りていないと思う備蓄品、第1位「簡易トイレ」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000097472.html
*7
NECソリューションイノベータ「第5回 BCP検討メンバーに女性はいますか? 女性目線でBCPの見直しを」
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/bcp/series/woman.html
*8
オイテル株式会社「サービス」
https://www.oitr.jp/service/
*9
オイテル株式会社「OiTrスポット」
https://www.oitr.jp/spot/
*10
オイテル株式会社「独自の働き方改革『ワークライフシフト』を推進。OiTr導入により出社時の安心感を高め、職場環境の改善に寄与した点がメリット。富士通株式会社」
https://www.oitr.jp/partner/interview/8119/
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