オフィス空間デザインを活かした障害者雇用〜誰もが働きやすい職場環境を整える〜

令和2年度に障害者雇用エクセレントカンパニー賞を受賞したウチダシステムズでは、オフィス空間デザインという本業を活かして、障害者だけではなく誰もが働きやすい職場環境を整えています。この記事では、障害のある社員が業務効率の向上に貢献するために、どのような取り組みをしているのかをご紹介します。

ウチダシステムズの障害者雇用状況

ウチダシステムズの障害者雇用状況(2023年6月1日時点)

従業員数:249名

うち障害のある社員数:3名

うち重度障害のある社員数:3名

障害者雇用率:2.43%

※株式会社ウチダシステムズは、令和2年度の東京都障害者雇用優良取組企業(障害者雇用エクセレントカンパニー賞受賞企業)として選出されています。

業務内容
身体障害者営業・営業支援
知的障害者コピー用紙の補充
重要文書箱の整理
郵便物の封かんと投函
入退受付表の管理とデータ入力
名刺裏面印刷
など

障害者が業務に貢献できる工夫をしています

障害を持つ方が働きやすい環境づくりは、全社員の働きやすさにも繋がるという考えから、ウチダシステムズはさまざまな工夫を凝らしています。障害者雇用を考えている方が参考にできるような工夫を4つご紹介します。

1.ピクトグラムで誰でもわかりやすく

会社独自でピクトグラムを使用したサインを作成し、社内の収納棚に貼り、「その収納棚に何が入っているか」が一目でわかる工夫をしています。このピクトグラムは、障害者を含めすべての社員がわかりやすいようにということが目的でしたが、探しているものをすぐに見つけられるため、全社員の作業効率のアップにもつながっています。

そして、ピクトグラムを使用したサインを自分たちで使い、改良して商品化もしています。

自社作成のオフィス内ピクトグラム

2.本体業務の効率を上げる作業の切り出し

知的障害がある社員に対しても「できそうな仕事は何でも切り出す」の精神で、周囲の社員やジョブコーチの意見を取り入れつつ、会社全体の利益に繋がるような仕事の切り出しを行っています。

例えば、デザイナーが本体業務に集中できるようにお客さまとの企画会議で使用した大量のメモを障害のある社員がデータ化したり、営業に同行してカタログ配布の手伝いを行ったり、コア業務の効率を上げていく視点で業務を切り出しています。

3.毎日の作業日誌で家族と密なコミュニケーション

知的障害のある社員には、毎日、その日の仕事内容を作業日誌に書いてもらい、それを家族に読んでもらっています。

作業日誌は、午前と午後に行った仕事内容を書き出し、できたかできなかったかを一覧表でチェックしていきます。また、自分で良かったと思う点や注意を受けた点、目標などを自由記述する欄のほか、会社と家族がそれぞれ記述する欄もあり、連絡事項のほか反省点があれば記入して家族へ伝え、改善するための助言をもらっています。

毎日書き続ける作業日誌は、会社や仕事に対する気持ちを知る手がかりになることはもちろん、家族とともに喜びを分かち合う成長記録にもなっています。

4.評価シートを使っての定期面談

年に1回、本人と家族と面談をしていますが、そのときは、就労支援センターの担当者の方にも加わってもらいます。

面談では、「日常生活技能」「社会生活技能」「社会生活における行動」の3つの項目についての評価シートを作成し、これからの目標について話し合い、さらなる成長を促しています。

障害者就労支援センターには、仕事面や生活面で課題がある場合に相談し、意見やアドバイスをいただいています。豊かな経験と知見のある第三者からの話には、当事者には気づけないポイントが多くあり、改善に取り組む指針にもなっています。

障害のある社員の声

辰巳 明

知的障害
2015年入社

1日6時間(10:00-17:00)
週5日勤務

就職前は「さまざまなことにチャレンジしていきたい」という気持ちと、「やっていけるか」という不安が半分半分でした。最初はジョブコーチから仕事の進め方などを丁寧に教えてもらい、その後は、上司や同僚の皆さんが広い心で見守って下さり、安心して働いています。

また、指示や作業の進め方などを「マイノート」に書き出して、失敗や注意されることをなくすように工夫しています。具体的には、コピーやスキャンなどの作業を教わっているときにノートをとり、迷ったときにすぐ見直せるようにしています。

その結果、頼まれた仕事がきちんとできたときは嬉しいですし、新たな作業も次々に任せてもらえるようになりました。

仕事内容

入退受付表の管理とデータ入力、名刺の裏面印刷、重要文書箱の整理などの庶務業務を主に行っています。また、デザイナーがお客さまとの打ち合わせで書いたメモや付箋をテキストデータ化、請求書への会社印押しや伝票の穴あけ等も任せてもらっています。企業へのカタログの発送作業のほかに、営業担当者に同行して学校でカタログ配布の手伝いをするときもあります。

障害者雇用のはじめかた

ウチダシステムズが障害者雇用をはじめた経緯や実際の取り組みについてご紹介します。

代表取締役社長

岩田 正晴

弊社は、オフィス・教育・福祉施設などの「場」創りを通して、「障害のある方の働く場」について以前から検討しており、2013年7月に内田洋行の地域販社4社合併を契機に障害者雇用を始めることにしました。

ただ、障害者雇用は初めてのことで、何をどのようにすれば良いのか全くわからず、お得意先である障害者福祉施設を頼り、施設の見学や社員向けの説明コンテンツ作成のサポートを受けました。

また、初めはジョブコーチに付いてもらって、障害のある社員には、仕事内容や進め方などを覚えてもらう一方で、私たちも接し方や指導方法などを教わりました。

そして、障害者雇用では働く環境づくりがとても大切と考え、まずは全社員を対象に障害の特性について学ぶ研修会を開催し、その後も継続的に実施。全ての社員がフェアで対等な関係を築いています。

障害者雇用の実践を通して、障害のあるなしに関わらず社員同士がお互いを理解し合い、同じ目的で共に働いている姿は誇らしいですし、それはとても自然なことだと感じています。

障害者との働き

障害者とともに働く際の進め方について、ウチダシステムズ人事総務部 担当部長のコメントをご紹介します。

人事総務部 担当部長

露崎 宏美

知的障害のある方が仕事をする際には、どうしても繰り返しの説明や確認が必要となります。大らかな気持ちで接することを心がけ、所属部署や人事など周辺の社員だけではなく、全社員の理解と協力をもって進めています。

業務については、初めから「障害のある方にやってもらう作業はない」と決めつけるのではなく、仕事の中の一部分でも任せられることを見つけていくことが大切です。弊社では任せられる作業はないかと、常に部署に関係なく多くの社員が考えています。

これから障害者雇用をする方に向けてのアドバイス

障害者雇用の際には、あまり難しく考えず、障害者就労支援機関の手助けを借りることをおすすめします。自社の業務内容の「切り出し」を支援機関の方と行い、ふさわしい能力を持った障害者の方をマッチングしていただくことで、想像以上の「できる仕事」が見つけ出せるはずです。

またそれは、ほかの社員の業務効率向上と障害当事者の方の能力を引き出すことにもつながります。その際には、ご家族との密なコミュニケーションも重要なポイントになると思います。

ウチダシステムズでは、オフィスだけでなく教育・福祉施設の場づくりも手がけています。障害者雇用に悩んでいる方をはじめ、さまざまなオフィス・施設づくりのヒントになるお話ができますので、お気軽にお問い合わせからご相談ください。


組織力の強化や組織文化が根付くオフィス作りをお考えなら、ウチダシステムズにご相談ください。

企画コンサルティングから設計、構築、運用までトータルな製品・サービス・システムをご提供しています。お客様の課題に寄り添った提案が得意です。

この記事を書いた人

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そしきLab編集部

ウチダシステムズのスタッフを中心に、組織作りや場づくりについて議論を交わしています。業務の中で実際に役に立ったことなどを紹介していきます。