
CAO & CHRO 川島 学 様
事業内容:長期的・持続的な企業価値・事業価値の向上を目的としたエクイティ投資及び、傘下のグループ企業の事業経営
所在地:東京都千代田区丸の内二丁目5番1号
丸の内二丁目ビル6階
実施内容:移転
HP:https://j-pix.com/
株式会社ウチダシステムズ 営業企画推進部 部長 吉田学
※2026年完成当時
「桃野さん。実は最近、都市部での本社移転はかなりレアイベントなんです」
インタビューに向かう道すがら、ウチダシステムズ営業企画推進部の部長・吉田学がそんな内幕を話す。
オフィス移転が主力事業の会社なのに、仕事は大丈夫なのかと驚き、聞き返す。
「え…?ニュースでは都心再開発が連日報じられているようですが、なぜそんなことになるのですか?」
「一つは空室率の低さです。丸の内の空室率は0.55%。1%を切っています。移転したくても、空いている床がないんです」
「それはすごいですね…」
「その延長にあるのが、賃料の高騰です。丸の内の大型ビルの募集賃料は、この1年で坪4万円台後半から6万円台に上がりました」
「えぇ…!」
「さらに東京駅の反対側、八重洲で2029年に完成する再開発ビルでは、坪10万円の契約が複数決まっています」
肌感覚で言えば、例えば従業員50人くらいのオフィスであればどうしても、100坪くらいは欲しいところだ。
コンパクトに設計しても、坪6万円なら毎月600万円以上の賃料がかかることになってしまう。
50人クラスのオフィスで、年間7,200万円から。諸々入れれば1億円近いであろう金額を負担できる会社など、概して2つしかない。
- その金額に耐えられる収益力があること
- その場所であることに、説得力のあるナラティブがあること
「日本共創プラットフォームさんはどちらなのですか?」
「まあそのあたりは、今から楽しみに川島さんに、お聞きしてみてください(笑)」
(株)日本共創プラットフォームと(株)ウチダシステムズが共同で実現した、本社移転という一大プロジェクト。
今回はそんなお話の裏側を、レポートしたい。
「むしろ居抜きだからです」
そして始まったインタビュー。
お話をお聞きしたのは、(株)日本共創プラットフォームさまの川島学・CAO兼CHROである(以下敬称略)。
インタビュアーは桃野が務め、全体をウチダシステムズの吉田がまとめる。
「今回、グラントウキョウサウスタワーからここ、同じ丸の内への本社移転をされたとお聞きしています。その背景をお聞かせください」
するとやはり、賃料の高騰が経営的な課題になっていたこと。
とはいえ、会社の理念からこの丸の内エリアの立地はマストであることなどを語る川島。
一通りの事情は理解できたが、どうしてもわからなかった本丸にいきなり切り込む。
「今回の本社移転、居抜き物件への入居とお聞きしています。本社と言えば、会社の顔です。築古のビルで居抜きとなれば、御社らしさを出すことは諦めたのでしょうか」
「いえいえ、桃野さん。それは完全に誤解でむしろ逆です。この移転とこの場所こそが、弊社の価値観を物語っている顔なんですよ」
「え、居抜きがですか?」
「はい、むしろ居抜きだからです」
わけがわからない。
日本共創プラットフォームの仕事は、魅力的で可能性がある全国の会社に、持続的に投資をすることだ。
グループ企業として迎え入れ、ともに成長を目指すのが同社のスタイルである。
そのことと、いったい何の関係があるというのか。
「投資先候補の事情は様々です。後継者不在であったり、技術は素晴らしいのに販路開拓に苦労をされていたり。優れた技術やノウハウがあるにもかかわらず、それを発揮しきれていないのです」
「それが居抜きに、どう繋がるのでしょう」
「築古の物件であっても、東京駅前は最高の立地です。前の入居者さんが残した、木の温もりに満ちたオフィスも、とても魅力的でした」
「…はい」
「そこに必要なものを加えれば、最高に価値ある物件になるのが“居抜き”の魅力ということです。我々の投資に対する考え方と、同じではないですか?」
そうか、そういうことか。
日本共創プラットフォームの仕事は「ありふれたわかりやすい案件」に、短期的な利ザヤを目指して投資をすることではない。
投資会社と言えばそんなイメージがあるかもしれないが、同社の理念は「連結の事業会社」として共に成長する投資スタイルだ。
価値を発揮しきれていない事業会社と手を組み、グループ会社化し、そこに新たな付加価値を生み出す。
「私たちは、短期でのイグジットを決して目指しません。そういった想いが、この居抜き物件への本社移転という形に表れているんです」

CAO & CHRO 川島 学 様
オーナー経営者の想い
「非常に感銘を受けました。しかし投資会社の本社であれば、1か月に1度くらい投資先の経営者を呼ぶイメージがあります。なぜ丸の内にこだわったのでしょう」
「私たちはそのような形で、グループ企業を見ていません。各企業には、会社から役員や幹部として必要な人財を出します」
「普段、各地で仕事をしている人が多いのであればそれこそ、本社は東京駅前でなくてもよいのでは…」
すると川島は要旨、以下のようなことを説明する。
私たちはそれぞれの投資先、すなわちグループ企業にいつ何があっても機動的に駆け付ける必要があること。
投資候補である企業についても、必要に応じて全国どこへでも、すぐに駆け付ける用意があること。
そして何よりも、各企業で奮闘している社員にとって、いつでもすぐに帰ってこられる所在地を重視していることなどだ。
「例えば事業承継で会社を手放そうという、オーナー経営者の気持ちになって下さい。会社は子供で、社員は家族なんです。そんな人をこちらに呼び出し、上から目線の定量管理などとてもできません」
「確かに、想像するだけでそんな会社など、とても信頼できそうにありません。ところでなぜ、川島さんや御社のボードメンバーは、そういう価値観に行きついたのですか?」
「それぞれに想いはあると思いますが、なによりも代表の冨山、松本がそういう価値観だからですね。ただ個人的には、少し別の想いがありますが」
「なんでしょう?宜しければ教えて下さい」
「私自身、勤務していた会社をPE(プライベート・エクイティ)に買収されたことがあり、当時、悔しい思いをしたからです(笑)」
嬉しいサプライズ
「過去、投資を受けた会社から反面教師として学びがあったところに、冨山さんの理念があったわけですね」
「はい、私の個人的な想いはともかく、冨山・松本と弊社の理念は全社にいきわたっていると確信しています」
本社移転がなぜ、居抜きだったのか。
なぜ丸の内にこだわったのかはよく理解できた。
その上で、築古の居抜きであればどうしても気になるのは、できたこと/できなかったことについての疑問である。
「お話はよく分かりました。しかし理念を実現するうえで、制約もあったはずです。諦めたこと、今から思えばやり直したいことがあれば、お聞かせ下さい」
少し首をひねり、束の間の沈黙をする川島。
どのように回答すべきか、この日、初めて考えあぐねているように見える。
「それがですね…。正直ないんです(笑)」
「え…?通常、社内の各部署・各階層からの厳しい要求などがあると思いますが、そういった困りごともなかったのですか」
「はい、ありませんでした。ただ資材高騰がすごい時期でしたので、発注を決断しないと1週間単位で見積額が大変なことになりました」
当時を振り返り、ただその一点が大変であったと語る川島。
本社移転という一大プロジェクトで、信じがたいほどのスムーズさだ。
「桃野さん、ここは私に少しお話をさせて下さい。このあたり、裏方であるウチに少しばかり頑張りどころがあったんです」
満を持して、ウチダシステムズの吉田が話を切り出す。
「実は居抜き物件では、出来上がっている内装に手を入れる工事が意外に大変なんですよ」
そして要旨、その工事をビル側が行うのか、クライアントの指定業者としてウチダシステムズが行うのか。
オフィス家具も、買い足しやビルオーナーから提案のあったものをどれだけ活用すれば、ベストなオフィスになるのか。
タイトなスケジュールの中で、それらの役割・責任分担を整理することこそ、実はオフィス移転のキモなのだと胸を張る。
すると川島も、思い出したように相乗りで思い出を語り始める。
「あ、そういえば一点、苦労というか…。工夫を凝らした場所はありました、水回りです。古いビルですので水回りがどうしても、女性社員には特に不評でした」
「それは間違いなくそうでしょうね…」
「ですので女性更衣室に、水回りを含め専用スペースを特設したのです。これはいろいろな意味でよい工夫だったと思います」
「女性更衣室に専用の洗面があると、本当に利便性が高くてありがたい」
「来客前のちょっとした身支度もできるので、助かる!」
「歯磨きだって、共用の水回りじゃ遠慮してしまいます…」
女性社員からの嬉しい生の声も紹介される。
するとウチダシステムズの吉田も、言葉を重ねる。
「いや~、築古だったこともあり、水を引くのは正直苦労しました」
川島が「特に工夫した」として挙げた、この一点。
そこにこそ、日本共創プラットフォームという会社の本質が表れている。
投資先を、単なる投資物件としてみていないこと。
グループ企業の社員も含めて、皆が同志であること。
社員の“働く幸せ”を軽視することなど、決してないこと。
取引先企業の担当者も含めて、大事なパートナーであると考えていること。
そして何よりも、その言葉に嘘がないことである。

“一番大事な”投資先
「私が今日知りたいことは、全てわかった気がします。最後に1点、この質問をさせて下さい」
「怖いですね、なんでしょう(笑)」
「今回の本社移転のパートナー、ウチダシステムズさんと吉田さんに点数をつけて下さい」
「99点です、本当に良い仕事をしてくれました」
そう即答する川島。その笑顔にも、一点の曇りもない。
「とても高得点ですね…。そうなると気になるのは、減点要素です。-1点はなんでしょう?」
「吉田さんがプロマネをしてくれなかったからです。吉田さん要素を除けば100点です!」
そう話す川島。
だがこの言葉の本質は、「任せたら、何もかもうまくやってくれた」という意味ではないことを、行間で語っている。
それを補足するかのように、吉田が言葉を重ねる。
「桃野さん、これにはわけがあるんです。日本共創プラットフォームさんは事業パートナーとして、取引先を捉えるんです」
そして、川島からプロマネを頼まれたものの、今の立場ではできないと断腸の思いで辞退したこと。
その代わりに、吉田がいなくても自分以上に成果を出せる体制を組み、引継ぎ、ご要望にお応えしたこと。
その結果、同じ目的の達成のため、一つのチームとして議論を深めることができた想い出を語る吉田。
お互いが“本物のプロ”と認め合い、納得いくまで議論ができたということなのだろう。
それが99点という数字の意味するところだ。

「あ、一つ言い忘れてました!最後にこれだけ補足させてください」
予定の時間も来たところで切り上げようとすると、川島が慌ててそんなことを言う。
往々にして、こういう時にこそ“実は今日、一番言いたかったこと”が出てくるものだ。
いったい何を語るのか、楽しみに待つ。
「実はこの本社に、時折グループ企業の社員さんが来て仕事をしてくれることがあるんです。東京の拠点として、普通に便利使いしてくれるんですよ。本当に嬉しいことです」
「えっと…(?)」
「あ、わかりませんよね(笑)グループ企業の皆さんが私たちの事を、仲間の事業会社として理解して下さっているということです。投資会社だと思っていると、寄り付きたくもないじゃないですか」
「確かに!」
「各企業で本部長や役員をしている社員が、その社員を連れてここに来てくれる。それこそ私たちが目指す価値観であり、それを体現できている本社を実現できたと思っています」
本社移転というイベントに、ここまでのナラティブやメッセージ性があるとは、とても思っていなかった。
日本共創プラットフォームという“投資会社”。
同社が一番大切にする投資先とは、実は「人の想い」なのかもしれない。

この記事を書いた人

桃野 泰徳
大学卒業後、大和證券に勤務。中堅メーカーなどでCFOを歴任し独立。主な著書『なぜこんな人が上司なのか』(新潮新書)『自衛隊の最高幹部はどのように選ばれるのか』(週刊東洋経済)など
X(旧Twitter) :@ momod1997
facebook :桃野泰徳
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